社交シーズン最後の王宮の夜会。
そこで起きたドレスにワインを掛けられる事件。


それを知った王妃様が激怒して、犯人の令嬢を王妃様のお茶会にお誘いになった…


稀に見ぬ王妃様のお怒りに、どこの貴族も何も言えず頷くだけで終わったあの日から三日。


そう、あの王妃様がお怒りで呼んだお茶会当日である。


その日私は、シュヴァイネル侯爵家で相変わらずにお針子部屋に居り、新たなドレス制作の終盤に入っていた。

そんな時部屋を離れていたアガタさんが、呼びに来た。
それは、満面の笑みで。


「モネ様!王太子様がお越しですよ!」

「え?今日来るなんて言ってなかったのに」

私はそう言うと、ちょうど切り良く裾始末を終えたドレスを眺めて、その仕上がりに満足しつつ、自分のドレスの糸くずなどを落として鏡で身だしなみを確認してから階下のサロンに向かった。

今日みたいに空き時間に唐突にジュールが訪問してくる事が増えてから、私はお針子作業中もなるべくデイドレスを着ているようになった。

着替えに手間取るとせっかく着てくれたのにあまり、話せぬまま帰っていったりしたことがあったからだ。

それはあまりに失礼なので、作業のしやすい、かつ可愛いデイドレスを選んで着るようになった。