〈side にこ〉
朝の清々しい匂いをかぎながら、
私は、学校の門をくぐった。
玄関で靴を履き替えていると…

「おはよう、にこちゃん!」

そこには、私の愛しの親友
野々花 菊乃(ののばな きくの)がいた。

「あっ!おはよう、菊乃!今日も
変な奴に声掛けられなかった?」

「変な奴って…?」

「男だよ!男!」

「あぁ!大丈夫だよ~。もう、にこちゃん
心配性なんだから。」

「当たり前だよ!菊乃は可愛いんだから」

「可愛いくなんてないよ…というか、
まだ、男の子苦手なんだね」

「苦手なんじゃなくて、嫌いなの。
私には、菊乃がいればいいの!」

「ありがとう。そんな事言われたら
照れちゃうよ…」

と言いながら、薄めのピンク色の頬っぺ
がほんのり、赤くなった。
か…可愛すぎる!さすが、私の癒し!
思わず、抱きしめそうになった、自分の
手の甲を叩き、

「菊乃、教室行こ!」

「あっ!うん。」

そういい、菊乃は、トコトコと私の
横に来た。そして、歩こうとしたら…

「あ…あの」

ふりかえると、短髪の男子が立ってい
た。またか…そう、菊乃は凄く男子に
モテる。これで何人目だろう。
私は、菊乃に話しかけようとしている
その男子にむかって、

「あのさ、菊乃みたいな天使に声かけ
ないでくれる?あんたがどこの誰だ
ろうが私たちには関係ないから、
あと、告白ならお断りだから、
さっさと、散れ。
行こ!菊乃」

私は、その男子をその場に残し、
菊乃の手を引っ張り教室へ向かった

〈side 春〉
教室に着き、扉を開けると、誰かが
抱きついてきた。

「重っ…離して、光輝」

「…わりっ」

といい、俺を抱きしめていた手が離れ
た。こいつは、腐れ縁で幼馴染の
佐々原 光輝(ささはら こうき)。

「聞いてくれよ!春!あのさ、俺
前々から、気になってる女子いるっ
て言ってたじゃん!」

「そうだっけ?」

「そうだよ!でな、今日その子に勇気
出して、告白しようとしたんだよ!
そしたらさ、番犬にどやされた…」

「番犬って?その子の?」

「おぉ…番犬こと宮内 にこ。春知んね
ぇのかよ」

「うん。誰?」

「すっげえ、怖いの。いかにも、
男嫌いですって感じで、野々花さん
とは、全然ちがう」

「へぇ…野々花さんって、野々花 菊乃 って子?」

「そうそう!めっちゃ可愛いくね?」

「そうかな…俺は、その番犬の子の方
が、泣かせてみたいなって思う。」

「はぁ…お前相変わらずのゲスだな」

「どうも。あっ、俺先輩に呼ばれてる
から1限目パスで」

「また、女かよ…」

「まぁな。じゃ、先生に言い訳
よろしく!」

「はい、はい」

俺は、先輩のいる空き教室に向か
った。