「……ジュリアお嬢様、ニルヴァーナ侯爵様がいらしております」

リュートに訪問を告げられて、ややうんざりとした顔を上げる。

「……そう…お通しして」

あの舞踏会の夜から、正式に交際が認められたとばかりに、侯爵は頻繁に私の元を訪れるようにもなった。

けれど、たいして会いたいわけでもないのに、訪れたのを帰すわけにもいかないのが、どうしようもなく鬱陶しかった。

「……ジュリア嬢、ご機嫌はいかがですか?」

現れて、軽く身体を折るのに、

「……そうね、あまり良くもないわね…」

と、牽制をする。