【kill:Ⅰ】






────キーッ キーッ


ブランコの嫌な音が、人気(ヒトケ)のない公園に響く。



「なんでお姉ちゃんを殺したの?」



天使と比喩できる程よく整った顔をした幼女は、形の良い唇からよく通る声を発した。


風が通り抜け、男が喉を鳴らす音を微かに運ぶ。



「ねえ、なんで?」



ブランコに座ってゆらゆらと揺れているその幼女が恐ろしい存在だということを、男は知っていた。


……彼女が、あってはならない存在だということも。



「早く答えてよ。ボクが優しい内に、さ」



先程までの綺麗な声とは似ても似つかないくらいの低く、圧のかかった声を、幼女はその小さな体からいとも簡単に絞り出す。


トッ


ブランコから降りた幼女はカウントダウンを始めた。



「さーん!」



ニコ、と人懐っこそうな笑みを幼女は顔に浮かべた。



「にーぃ!」



みるみる笑顔になっていく幼女とは裏腹に、男の顔は恐怖に歪んでいく。



「い〜ち!!」
「たっ助けっ…」



男は助けを呼ぶが、もう遅い。
人気のない公園では男の声が誰かにも届く筈がなかった。



「ぜろ〜!!」






カウントダウンが終わった。


人当たりの良さそうな幼女の満面の笑みは一瞬にして消え、無表情になる。