仁と食事中に鳴り出した携帯を鞄から取り出す。

表示は剛だ。


「誰?」

「剛みたいです。」

「出たら?」


仁の了承を得て、携帯を耳に当てた。


「はい。」

「悠菜?もう帰った?」

「うん、何?」

「資料の件なんだけど?」

「資料?」


どうやら仕事の資料の件で用事があるらしい。

チラリと前に視線を向ければ仁と目が合う。


「この資料さ、来週までで大丈夫?」

「うん、そのように聞いてるよ。」


突然携帯が奪われ、驚きに仁を見た。

仁が今にも話そうとしている。


「ちょっ…………。」

「剛?俺に聞け。」

「兄貴?!?」


遅かった。

仁が剛と話し始めてしまった。

大声で驚く剛に溜め息を吐いた。


『帰った?』

『うん』


会社ではないのがバレている。

なのに仁と一緒にいるって………絶対に怪しまれる。


『男の部屋に泊まるような女』


剛の言葉が蘇ってきた。