「ついに秘密を知られてしまいましたね……」

 珈琲を手にのぞみは重々しくそう言った。

 この時間はあまり人気のない広い社食。

 祐人が、サボっていると思われないよう、テーブルに書類を広げており。

 二人は、時折、それをチェックをするフリをしていた。

 秘書室だと、誰が聞いているかわからないからだ。

 そんな中、のぞみはテレビでモザイクをかけられ、音声を変えられて、告白する人のような深刻さで話を始めた。

「実は――

 専務は、私の高校のときの担任の先生だったんです」

 沈黙があった。

 まだ、なにか続きがあると、祐人は思ったようだった。

 ちょっとの間のあと、

「待て」
と言われる。

「それは、どの程度の秘密だ」

 全然、たいした秘密じゃないじゃないか、と祐人は文句を言ってくる。