その夜、父が慌てた様子で帰って来た。

「拓海、急げ」

「父さん、どうしたんだよ」

「とにかく…。母さんの陣痛が始まったらしい」



父の運転する車に揺られて、病院へと向かった。



「長谷川です」

父が伝えると、看護師さんは「こちらでお待ちください」と、俺たちを分娩室の前まで案内した。

ベンチに腰掛け、視線を上げると、扉の上のランプが灯っていた。

母はこの向こうで、痛みと戦っているのだろう。