あんまりよく眠れなかった。



何度も目が覚めたし、変な夢ばっかり見て…。



ほら、今だって…陽向くんが目の前にいるの。



あたしの頭をゆっくり撫でていて、つい甘えたくなる。



ホントは、昨日もっと陽向くんと一緒にいたかったんだ。



友達と遊びたいのもわかるけど、ふたりっきりでデートもしたかった。



もう片方の手をぎゅっと握っていると、陽向くんがにっこりと笑った。



「起きた?」



あぁ、声もリアル。



本当に陽向くんがあたしの部屋にいるみたいな…。



「遅刻すっぞ」



え。



そういえば陽向くんは制服を着ていて、見慣れたバッグが床に投げ出されている。



ベッドの脇に座ってあたしの顔を覗きこんでいたけれど、立ち上がってカーテンを勢いよく開いた。



まっ…眩しい!



「いっ…今、何時?」



夢じゃなかった!



慌てて飛び起きると、陽向くんが腕時計を目の前に突き出してきた。



「8時半まわってる」



「ウソっ…遅刻!」



今からどれだけ急いでも、間に合いそうにない。



あぁー…やっちゃった。