それから数日が過ぎてカレンダーは五月になっていた。五月晴れという言葉があるように連日清々しい天気が続いている。


「待って。動かないで!」

先日学校行事で行われた球技大会での筋肉痛も癒えていないのに、私は今とてもムリな体勢をしていた。

大きな声を出したせいか、優雅にお昼寝をしていた〝三宅さん〟が逃げていってしまい、手に持っていたスケッチブックにはまだ顔しか描けていない。


「あーあ、逃げちゃった」

地面を這うような体勢をしていた私とは違い、なぎさ先輩は外階段の踊場の壁に寄りかかりながら、パーカーのフードを深く被って居眠りをしようとしていた。


「暇なら気を引いてくれたらよかったじゃないですか」

「ムリだよ。猫は気まぐれだし」

そう言いながら先輩は気持ち良さそうなあくびをする。