社会人になり、働くようになったが、職場では仕事のみの会話。

黙々と仕事をこなし、笑顔すら見せない裕美。

家に帰っても笑わなくなっていた。

そんな日が何年も続いたある日、珍しく残業に追われた。

一息つこうと、伸びをした時、コーヒーがデスクに置かれた。

これが裕美の人生を大きく変えるきっかけになった。

「ありがとう?」と振り向いた裕美の目の前にいたのは、気さくで優しくて気遣いの出来る後輩、神乃浩介

「せんぱぁ〜い?無理しちゃ駄目ですよ!」そう言いながら隣の席に腰をおろす。

人と関わることを避けてきた裕美。

けど…今は関わらないといけないことを悟って…コーヒーを口にした。

「先輩って…笑わないですよね?常に無表情だし…」と言われて驚く裕美。

周りを良く見ている子なんだと感じていた。

けどこのときはまだそれくらいで。

その後、二人で何とか残業を終えると、浩介が送ると言い出して、裕美は送ってもらうことにした。

久しぶりにまともに人と話したせいか、それとも単に浩介が聞き上手で話しやすいのか、裕美は少しずつ自分のことを話すようになった。

それからと言うと、何かと浩介は絡んでくるようになり、裕美は浩介や、他の社員達とも話すようになっていた。

気がつけば、圭の死から5年以上が経っていた。

ある日、裕美は浩介に誘われ、一緒に飲むことになり、バーに入った。

アルコール慣れしていない二人はあまり飲めないが、お酒の力を借りて、裕美は圭の話を始めた。