まだ残暑が続く9月。


彩羽と会わなくなって5年目を迎えた。


「お兄さーん」


夜、仕事を終えて店を出たら声をかけられた。


「私のこと覚えてる?3月に一回会っただけだけど」


サングラスにつばの広い帽子。


6か月前と変わらない格好の女性。


「佐々木穂希さんですよね?」


電柱にもたれるようにして佐々木さんが立っていた。


「そ。というか私、お兄さんに本名名乗ったかしら」


「いや、隆さんから聞きました」


俺が佐々木さんと喋ってんのを隆さんが見たら嫉妬しそうだけど。


「ねぇ、今時間ある?話したいことがあるんだけど」


ほぼ初対面の俺に?


「別にいいっスけど」