「    !」

声が聴こえる。

ずっと、聞きたかった声。もう、忘れかけてしまった声の音。

目を開ける。いる。あいつが、ずっと、ずっと探していたあいつがいる。

白い花が咲くそこで、笑っていた。

「琴音」

名前を呼ぶ。手を伸ばす。

こっちに来いと呼ぶ。

探していたんだ。お前を、ずっと、ずっと…。

「    」

…どうして、来ない?…どうして、聞こえない?

笑っている。あいつが、すぐそこで、笑っているのに…。どうして俺の足は動かない?

「…こと、ね?ッ」

頬を何かがかすめていく。

その瞬間、華が咲く。赤い、朱い、華が…。

白かった花が赤く染まる。赤く、赤く…染まって、赤く染めあげていく。

赤い華の中心で、琴音は…赤く、染まって…。