‐客観視‐

世界が時を止めたように制止する。

自分の手を掴んだまま、息を整える幼馴染みである成夜を呆然と見つめる琴葉。

そして、その琴葉を驚愕に満ちた顔で見つめている季龍。

なぜ。どうして。

琴葉と季龍が思い浮かべている言葉は皮肉にも同じ。だが、向けられている対象は別だ。

言葉がでない。沈黙が落ちていたが、息を大きく吸った成夜が顔をあげる。

「行くぞ!」

「ッ!?」

強く引かれた手。その手に引かれるまま、琴葉は踏み出す。

対する季龍はその場から動けなかった。驚きのあまり、その手に力はなく、琴葉と繋いでいた手は意図も簡単に離れてしまう。

琴葉が振り返る。それは一瞬だったが、季龍を見るその目は悲しみの色に染まっていた。