私は小学校を卒業を期に椹木家の養女となり椹木香菜となりました。

書類の手続きなどはとっくに終わっており本来ならもっと早く苗字が椹木になり、椹木家で暮らすことも可能でしたが苗字が変わるのですから混乱を避けるために小学校を卒業してからにしようと話し合いで決まりました。


と言っても、中学校のメンバーは小学校とあまり変わりませんので意味がないのですが私学受験をせず同じ地元の中学校へ入学する同級生には軽く説明をしておきました。


さて、椹木家の養女となり私は庶民から令嬢扱いになってしまったのですが、だからと言って何かを制限されるわけでもなく自由に過ごせてます。


義理の兄となった恭介とも上手くいってますが、兄妹になったからこそわかったことがありました。


恭介はよく喧嘩をして帰ってきます。

昔から、生まれつきの派手さと実業家の息子って理由から年上の方(先輩)から目をつけられやすいみたいです。


恭介の意思とか関係なく、調子に乗ってると思われているのでしょう。


祥太郎さんと春歌さん……

いや、お父さんとお母さんは慣れているからか怒ったりしません。


もう呆れているそうです。


私も呆れるしかないか…と思っていたある日の出来事です。


「お帰りな……さ…い」


とある休日、友達と遊びに行くと言って朝に出かけた恭介が夕方ごろ傷だらけで帰ってきたのです。


同じく傷だらけのお友達も連れて…


吃驚したので、その衝撃で読んでいた雑誌を床に落としてしまいましたが、それを気にしている場合ではありません。


「どうしたんですか、その怪我!?」


とりあえず恭介と、恭介のお友達をソファへ座らせ私は救急セットを棚から取り出した。


「何があったんですか?恭介」


恭介が喧嘩をすることは知ってはいましたが傷だらけなのは初めてです。


「何がって、いつもと変わらず因縁つけられたんだよ。それに壮馬もいたし勝てると思ったんだよ。実際に勝ったし」


「勝ち負けの問題ではありません。逃げるという選択肢はないんですか」


全くこんな痛々しい傷を作るなんて…と溜息をつきながらチラッと恭介のお友達を見ました。

見た目が派手な恭介とは正反対で黒髪に眼鏡をかけている普通の中学生


「えっと、初めまして。あの、名前は壮馬さんで合ってますか?」


「うん。君は香菜ちゃんだよね。恭介から聞いてるよ。こちらこそ初めまして」


「恭介から何を聞いているか知りませんが友達は選んだ方がいいですよ。恭介はオススメしません」


「随分な言われようだね恭介」


「うるせぇよ!」


ふて腐れたような顔をしそっぽ向く恭介に苦笑いをしながら壮馬さんは私を見た。


「香菜ちゃん、僕と恭介は腐れ縁だから。良い意味で言えば幼なじみ…かな」


こんな正反対な二人がどうやって友達となったのか不思議ですが、壮馬さんも喧嘩に参加するなんて意外です。


人は見かけによらず…ですね。


「ん?…先ほど壮馬さんがいたから勝てると思ったって恭介は言いましたよね」


「それがどうした?」


反省のカケラもない恭介にイラつきながらも私は失礼を承知の上で壮馬さんを睨みつけることにしました。


壮馬さんも驚いているようです。