椹木家は地元では有名な実業家だと聞いてはいましたので覚悟はしていましたが予想よりも大きな家でした。


家というよりかは豪邸ですね

普通ならば豪邸に驚き五月蝿く声を張り上げるのかもしれませんが、職員さん曰く私は子供らしくない表情や行動をすることがあるらしく


凄いという気持ちよりも広すぎて迷子になりそう…という気持ちが勝ちました。


本当に椹木家の養女になれば、この豪邸に住むことになります。

質素な生活に慣れてしまっている私は落ち着いて生活を送れるのでしょうか


「お前が香菜か??」


椹木夫妻に案内された部屋に入るとソファで寛いでいる見た目が派手な少年がおり、私を見るなりすぐに話しかけてきました。


「はい、姫宮香菜です。えっと」


「オレは椹木恭介。お前よりも一つ年上の中学生」


名前は事前に聞いていましたが自ら名乗ってくれるとは思いませんでした。


「突っ立ってないで座れば?」


そう言われ恐れながらも私は恭介さんの隣…ではなく真向かいのソファに座らせていただきました。


いつの間にか祥太郎さんと春歌さんはいなくなっており、この空間には私と恭介さんの二人きり。


初めて会ったばかりで正直キツいです

ずっと無言だと更にキツい。


「お前、遠慮することないんだぞ」


「え?」


「親父達から聞いてる。事情も何もかもな。けどお前が嫌なら無理して家族になる必死はねぇよ」


恭介さんの真っ直ぐな瞳、射抜くような鋭さは怖いと思いませんでした。

寧ろ気を遣って下さっているのではないかと……


「あの、何も思わないのですか?私が義理とはいえ妹になることに対して」


「別に」


「即答ですね」


「血縁関係はなくても戸籍上は家族となる、ただそれだけだ」


「それは…そうですが」


「お前こそどうなんだよ。親父達から何言われたか知らねぇが口車に乗せられてないだろうな」


「それ、私を馬鹿にしてますよね」


「してねーよ」


めんどくせーと言いたそうに眉を寄せながら恭介さんはソファに寝転んだ。


「本気で椹木家に来るならオレは構わない。オレに対して嫌なことがあればハッキリと言え。オレもハッキリと言うからよ。まぁいずれ慣れるだろ」


特に興味がないわけでもなくあるわけでもない。しかし私が椹木家へ養女として暮らすことに抵抗感はないそうです。


少し安心しました。

緊張感が解けたような気がします。


「つか、お前、ちゃんと飯食ってんのか?細すぎだぞ」


「は?」


「オレと腕相撲したら腕折れるんじゃねぇか?」


恭介さんは突然立ち上がり、私の腕を掴みたしたが即座に私は振り払いました。

強く掴まれてなくてよかったです。