いつの間にか。おじいちゃん達、上役の面々は広縁に腰掛けて、石庭の枝垂れ桜を肴に上機嫌で歓談中。
 会場内を見渡すと、赤ら顔したほろ酔い加減のオジサマもちらほら。こうなってくると会社の宴会の景色と変わらない。

「このあとって何か企んでんの?」

 古希のお祝いだし、おじいちゃんにサプライズでプレゼント。くらいは遊佐なら考えてそう。
 顔を覗き込むと、白々しく目を逸らして「さあ」って嘘ぶく。
 あたしはピンと来てほくそ笑んだ。

「・・・アレでしょ、どっかの芸妓さん呼んであるとかでしょ」

 反対側にいた榊がいきなりむせた。ビンゴ!

 おじいちゃん、お座敷遊びもキャバクラも大好きだもんねぇ。
 上に立つ人間は口説き上手が多いって聴くけど、あれかなぁ、お父さんは反面教師で硬派なのかなぁ・・・・・・。
 おじいちゃんの隣りで黒の紋付着た、お父さんの背中を眺めてそんなコトを思った。

 寡黙なお父さんを支える、口説き上手な哲っちゃん。
 榊と遊佐。
 ・・・・・・なるほど。上手いコト出来てるね、世の中って。