ガタンッと何かが激しくぶつかる音を耳にして、リリアはゆっくりと瞼を持ちあげる。

視界に映りこんだのは、初めて見る薄暗い部屋だった。

ゆらゆらと揺れるいくつもの蝋燭の明かりのせいか、すべてぼんやりと霞みを帯びて見えた。

どこからか聞こえてきた苦しそうに呻く声にハッとし、リリアは身体を起こそうとする。

しかし、身体全体が痺れているような感覚と、何より後ろ手に手首を縛られていたため、起き上がることはできなかった。


「あらあら。目覚めさせてしまったようね」


ぼやけているリリアの視界に、覗き込む女性の顔が映り込んだ。

途端、目に刺すような痛みを感じ、思わずぎゅっと目をつぶってしまったが、聞こえた声音からそこにいるのが誰なのかはしっかりと理解していた。


「気分はどう?」


エルシリア王妃の指先が、リリアの頬の頬をつっとなぞった。

触れられたことへの嫌悪感から身を捩ろうとするが、身体の熱さと寒気、息苦しさに喉元のひりついた痛み、なにより全身が重く、頭を動かす事さえ簡単ではない。


「そうだろう。とっても辛いだろう」


楽し気に響いた王妃の声音に込み上げてくる悔しさと身体のあちこちで疼き出した痛みに、リリアは涙を滲ませる。