ケータイ小説 野いちご

次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい

第一章、心に響く口づけ


王都モルセンヌのそばを穏やかに流れるクロンティサス川を渡り、三つの町を経由しながら森や平原をいくつも越えて行けば、アシュヴィいちの高さを誇るカサータ山が現れる。

その山の麓にのんびりと息づくのはテガナ村。まさに、王都の北西に位置する村である。

王都から遠く離れたこの村にも数日前に使者が来て、未来のアシュヴィ王の花嫁の話を置いていった。

そのためいつもは静かなこの村が、ここ数日間、異様な興奮に包まれている。

それもそのはず、この村には予言にぴたりと合う娘、リリアがいるからだ。



村の南側には豊かな森と畑が広がり、それらを傍らに眺めながら平坦な一本道を進んで行けば、村の中心部である広場へとたどり着く。

噴水や花壇が並べ置かれた広場は人々の憩いの場であり、周りには民家や店が雑多に建ち並んでいるため村の中で一番活気がある場所だ。

広場より北側、よりカサータ山に近い場所にテガナ村の村長であるアレグロの大きな屋敷があり、広々とした庭の片隅に、小さな民家がもう一軒ひっそりと存在している。

その家の中で、仕事へと旅立つ準備を整えている父親の大きな背中を、黄金色の髪の毛先を弄りながらリリアはじっと見つめていた。



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