やっと悠君と連絡が取れて、私たちが合流したのは開演ギリギリだった。



連絡が取れなかった理由はわかっていたから問い詰めたりはしなかったけど
ろくに話もできないまま開演を迎えてしまった。



ライブはまさに異空間で、瞬きすら惜しいと思えるほど当麻君の魅力が120%詰まってた。



そしてそのライブの終盤。
ミラクルが起こった。



当麻君の投げたカラーボールが、吸い込まれるように悠君の頭上にやってきてすぽっ、と。
悠君はそれを見事にキャッチしてしまったのだ。



それまで会場全体にあった興奮や熱気とは違う、歓喜と羨望の声や視線が大きなうねりとなって一瞬で周りにあふれかえった。



さっきまで憧れの人がその手に持っていたものが、手元にあるってだけで興奮するし鼻血もの。



ひとめ見たいし触ってみたいし
なんなら奪いたい!
うらやましい!
っていうみんなの気持ちが痛いくらい私にはわかる。



なのにキャッチした当の本人はキョトン顔。



「……ねぇこれって、投げ返すルール?」



手の中のピンクのボールを見つめてそんなぶっとんだ発言をする始末。なんならもう振りかぶってる!



「ダメダメ!そのまま離さないで、ウェイトっ!!」



「……俺は犬か?」



背が高くて腕が長いからなのか
それともお宝を吸い寄せる磁力でもあるのか。



とにかく悠君ってすごいと本気で思ったし
膝が震えた瞬間だった。



でもボールを手に入れた悠君は、ライブ終わりで周りの女の子たちに囲まれてしまった。



……まぁこれについては、予想はしてたけど。