電車に揺られてライブ会場を目指した。


最寄り駅で降りると、
空は一面グレーの曇天。
冷たい風がコートの裾をまくり上げた。



頬を刺すような風が悠君のふわふわの髪を揺らしてる。
私今、ほんとに彼の隣にいるんだよね。
そう思うだけでドキドキした。
隣で見上げる悠君の横顔、好きなんだ。



こっちの冬も結構寒いでしょって、聞いたら
だねー、って。



会話終了しちゃったよ。



手を繋ぎたくて
伸ばしかけた手の行き場、
なくなったじゃん。



仕方ないから冷たい指先をフーフーしてみた。



みんなはどんなタイミングで好きな人と手を繋いでるのかな。私にとっては数学より難しい課題。



「げ。なにこれ!」



「これが噂のグッズ列ってやつかぁ」



会場に着いたら、どのブースも長蛇の列で、最後尾を記す看板のほうに向かった。



噂には聞いてたけど、
一体買うまでに何時間かかるんだろう。



覚悟はしてたけど、たぶんテーマパークの人気アトラクション並みの待ち時間なんだろうな。