王宮の朝はとても静かに始まる


_______________トントン


「失礼致します。よく眠れましたか?姫」


「ん…。おはよう、ニア。」


まだ覚め切ってない目を無理矢理開いてそこに立っている私の付き人であるメイド、ニアの元に行く

世界で最も大きな国とされているラスティーネ王国の国王、トワロフ・ラスティーネ。
私はそのトワロフ国王の実の娘であるエラ・ラスティーネだ。

ラスティーネ王国は約1000年もの歴史を持ち、ラスティーネ家に至っては世界で初めて最も歴史の古い一家としてその名を広げている


鳥が朝日を連れてきて、風は光を乗せてくる



「姫、今日のご予定は午前中にクレイド伯爵とのお茶会に参加、昼からはヴァイオリンのお稽古とサンナルフ合唱団のコンサートへご出席する事になっています。」


「そう…。」


ニアの言葉に興味も示さないでニアのするがままに服を着せられる


「そうです、姫。今日は新しいお世話係が来ることになっているんですが」


「新しいお世話係…?私は今の人手で充分だと言ったはずよ?」


「そうなんですが実は…」


_______________ガタンッ



ニアが私のコルセットを留めていた時だった。

勢いよく部屋の扉が開いた



「誰…?」


そこに立っていたのは着崩した燕尾服を着た私と同い年ぐらいの少年が立っていた


「お前が今日から俺が仕える主人か…?ハッ、もっと上玉の奴が相手だと思っていたのにまさか俺と年もそう変わらないこんな女が主人だとは聞いて呆れるな。」


「あなた!!姫への御無礼を謝りなさい!この方はラスティーネ王国の王女なんですよ!?」


ニアが必死な形相で男を睨みつける



「ふ~ん?案外綺麗な顔立ちをしているな」


男は私の髪の毛を指先で絡ませながらそう言った。
いくら相手が初対面の人だからといって、この行為は王女である私自身のプライドが許せなかった


「あなた何者か存じ上げませんが、これ以上私に恥をかかせる気なのであれば、今すぐに措置を取りたいと思っているのだけれど?」


男の首元に護身用にと渡されている剣を添える

だが男は怯むばかりか口角を少し上げると私の腰に手を添えてきた


「この世の全てを手に入れた少女…か。噂通りの頑固なお姫様な事だ。いいだろう。エラ・ラスティーネ王女、これからは俺が君の付き人となって君の事を護ってやる。もちろん無礼も働かないし恥もかかせない。この世の全てを失ったこのイーサン、君に忠誠を誓おう」



「な…なんなのよ。あなたは」


「ただし、君は少し世界に愛されすぎた。だから俺から君に挑戦状だ。俺は君に忠誠を誓うが君のものには絶対にならない。君がこの世でたった一つだけ手に入れられないものがある。それが俺だ。この世の全てを手に入れられないで王女を名乗るのも引け目を感じるだろう?」


その男、イーサンは私から手を離すと膝まづいて手を取りキスをした


この変な男、イーサンとの出会いが私を変えていくとはまだ知る由もなかった