濡れた制服は脱ぎ、予備の制服に着替えた
よかった、持ってきておいて


「杏莉!」


こちらに走ってくるのは私が唯一信じている
親友の飯島華恋。ボブでパッチリとした二重で
性格も明るく、私と大違いだ


「華恋、どうしたの?そんな走って」


「杏莉、ごめん…また…また私救えなくて!」


そんなことか。別に構わないのに
ただ華恋は傍にいるだけでいいのに


「大丈夫だよ。迷惑かけてごめんね」


華恋はどんなことがあっても私の傍にいてくれる。イジメられてもどんな状況でも、華恋は傍にいてくれた


「もっと杏莉は私に頼っていいんだからね!?ほら!次移動教室だよ!杏莉のも持ってきたし、行こ!」


気遣いもしてくれて本当に華恋は優しい


「ありがとう。華恋」


「いいのよ!だって私ら親友じゃん!これぐらい当たり前のことよ!」


親友…嬉しいな。私には華恋さえいればいいんだ。同情なんかしてる偽善者なんかどうだっていい


「なぁ!俺も一緒に行っていいか?」


見覚えのある声…この声って


「誰?…寺川じゃん!何で?」


やっぱり、寺川くんだ。また何の用なの?
どうせ自惚れてるだけの偽善者じゃない


「俺、兎壁と友達になりてぇんだ」


また言ってる。どうせ嘘に決まってる


「軽い気持ちでなら、杏莉に近づかないで」


華恋が私の前に立ち、そう言ってくれる


「ちげぇよ。俺は本気だ」


今までの偽善者を見てきたけれど、彼の目は真剣だった。表情も全て。


「なぁ兎壁!俺と友達になろうぜ!」



一番星のようなキラキラとした笑顔で私に手を差し伸べてくれる


「私は貴方のことは信じられない」


「俺は兎壁に信じてもらえるように頑張る!」


は?何言ってんのこの人。ほんと馬鹿じゃないの?…でも、どこか嬉しげな自分がいた


「…勝手にすれば。行こ、華恋」


「あ、うん」


華恋と歩くと着いてくる寺川くん
ほんと諦め悪い。どうせそれも演技でしょ?知ってるよ
そんなこと、たくさん経験してるし


「ほんと、馬鹿…」


誰も聞こえないような声でそっと呟いた