美術準備室のドアに手をかけると、幸運にも鍵は開いていた。


拓けた視界に飛び込んできた美術準備室内は、物置と聞いて想像していたほど荒れていなかった。

それどころか空気は澄んでいて、清潔ですらある。


物も片付けられ、あるものといえば部屋の中央に机と椅子が一脚ずつだけ。


お腹が空きすぎた私は、その机に座り、重箱を開けた。


たこさんウインナーに、唐揚げに、爆弾おにぎり。

中には、大の好物ばかりが詰め込まれている。


朝5時から準備をした賜物だ。


「いただきます」


大のために準備したお弁当に、箸を取りだして手をつけていく。


一度も箸を持つ手を止めることなくパクパクと口に運んで行き、三段の重箱は五分ほどでほとんど空になった。


そして最後に残ったのは、大が一番好きな卵焼き。