それはまるで、私の心の色をすべて焼き尽くしてしまうかのような、そんな衝撃だった。


「だれって、高垣だ、高垣未紘……。
覚えて、ないのか?
中学の頃、河原で会っていた子だ」


滅多に動じることのない虎太郎さんの、動揺に染まった声が聞こえてくる。


だけど、明希ちゃんの返事はやっぱり変わらない。


「ごめん、記憶にない」


高校に入ってからのことはおろか、〝ファン1号くん〟の時の記憶も失われたままだなんて。


体から力が抜けていく感覚に陥る。


ぎゅっと備忘録を抱きしめた、その時。

ガラガラッと音を立てて、美術準備室のドアが開いた。


身を隠す間もなく、私の存在に気づいただれかが、目の前に立つ気配。


「あんた……ちょっと来てくれる?」


声に引っ張られるように顔をあげれば、上の学年だと思われる女の人が、目を眇めて私を見下ろしていた。


その人には見覚えがあった。

明希ちゃんが倒れた日、明希ちゃんと話していた女子ふたりのうちのひとり。

──そして恐らく、明希ちゃんの元彼女。