旧校舎の廊下は、こんなにも長かっただろうか。

走っても走っても出口が見えない。


あの日のように、窓から差し込む眩しい夕陽があたりの景色をオレンジ色に染め上げている。


息があがるのも厭わず、まるで夕陽から逃げるかのように、私は木製の廊下を走り続けた。


──あの日の翌日、大が乗っていた大型バスが事故に遭った。


込み上げてくる渦のような感情に、足を動かしながらもぎゅっと下唇を噛みしめた時。


「ヒロ……っ」


孤独に思えた世界に、突然、背後から聞こえてきた声が割り込んできた。


無我夢中で走っていたから気づかなかった。

いつの間にか、私のものではない、廊下を蹴る足音が追ってきていたことに。


でも優しいあなたに会わせる顔なんてない。


追いつかれまいと、さらに加速して廊下を走る。


だけど、なおも追いかけてくる足音。


振り返りもせず必死に走り、はるか前方に旧校舎の出口を見つけた、その時。


「ヒロ……、──未紘……っ!」