何事もなかったかのように話しかけてくるサナと陸くんに、相槌(あいづち)を打っていると『おはよーさん』堀内くんがクラスの男子に挨拶をしながら教室に入ってきた。



自分の席へ鞄を置くなり、


「橋本、顔散らかりすぎ」



『目腫れすぎ』とジェスチャー付きで苦笑いしてきた。つられて、私も困った顔で微笑み返す。



「……で、橋本をこんな顔にさせたのに、何をヘラヘラとのんきに話しかけてんだよ」




 『凄いな。よく悪気もなく話できるな』と、陸くんを強く睨む堀内くん。



 そもそも堀内くんには陸くんと別れてない事は言っていない。 いや、言えてない。 だから堀内くんがサナの事を口を滑らしてもおかしくない。



 ”お願い! 余計な事を言わないで!”



 そう願いつつ『何でもないから気にしないで』とすかさず陸くんとサナのフォローに回った。