衝撃の始業式の日から2日経った今日。

転校生はクラスに馴染めずにいるようだ。

それ以上に非常にまずい状況である。

「おい、朝比奈〜〜お前耳聞こえないの?まじうぜえ、人形かよ!なんか喋れよ!」

クラスの中心グループのリーダー、夏菜子が舞の机の脚を蹴る。

舞は小さなうめき声すらあげない。

ただただ俯いている。

この2日でわかったことがある。

舞は耳が聞こえないわけではない。

音に反応してそちらを見るし、今だって、夏菜子たちに反応している。

夏菜子たちを見るその目からはなんの感情も感じ取れないけど。

「またやってるね。夏菜子たち。」

明里が両手を挙げ、お手上げのポーズをとる。

正直、夏菜子たちに目をつけられた舞は終わりだ。夏菜子は人をいじめることで快感を得る人種だし。

「花凛、変な気起こさないでね?」

明里がぼーっとしていた私の顔を見つめた。

「なに、変な気って。」

私は半分わかっていたが、尋ねた。

「朝比奈舞、助けようとか思わないでよね。」

私はあの時のことが一瞬頭によぎる。

多分明里も同じことを考えているのだろう。

「わかってるよ。」

私が微笑むと、明里はにっこりと笑った。

舞を助けたい気持ちがないわけじゃない。

だけど、私にはできない。あの時みたいになりたくない。

だから…

「だって、あれは朝比奈 舞が悪いんじゃん?
耳聞こえてるのに、なにも話さないなんて感じ悪いし。今回はちょっと夏菜子たちに共感…なんちゃって。」

私は、自分に言い聞かせるように言って誤魔化した。

明里は困ったように笑って、そのあと悲しそうな顔をした。