ナオは2日間入院し、その後自宅療養となった。

問題はまだ片付いてはいない。

だけど、本来なら入院期間はもっと長くなる予定だったのだ。

それを無理やり退院したわけだから、自宅療養は絶対だと医師に厳しく言われてしまったらしい。

そのくらい、ナオの身体はボロボロだったということだ。


自宅療養と言っても、ナオは仕事が心配なのかベッドでゆっくり眠っていてはくれない。

見兼ねた私はソファで膝枕を作り、ナオをコロンと横にする。

不思議なことに、そうするとナオはおとなしく気持ちよさそうに目を閉じるのだ。

まるで猫みたいだけど、そんなナオの髪をなでるのがたまらなく嬉しい。


自宅療養は3日間と言われている。

「…もう治ったから明日から行っていいよな?」

まだ今日の午前中に退院してきたばかりなのに、この調子じゃ過労死まっしぐらだ。

「ダメだよ。もう少し休んで」

ナオは不満げな表情だ。きっとやらなければいけないことがたくさんあるんだろう。

だけど、できれば今は仕事のことは忘れていてほしい。
そう思って話題を振った。

「ねえ、ナオ。魔法って催眠術みたいな感じってこと?
私、本当にナオのこと忘れてたよ」

ナオは腕をおでこに乗せて、ふっと小さく笑う。

「…多分俺じゃない。詩織の魔法だ」

「え…?」