紗耶の部屋で眠らせてもらった翌日、たくさん泣いたせいで瞼か重い。

時計は9時を指している。

眠れないと思っていたのに、ぐっすり寝ちゃってたな…

疲れてたんだな。

鏡を見るのも嫌で、寝起きでぼんやりしたまま何気なくテレビをつけた。

瞬間、『天星製薬』というテロップが目に飛び込んできた。

中継に出ているアナウンサーの後ろには、見慣れた会社の建物がある。


『栄養ゼリーに糸の一部が混入』


テロップとともにアナウンサーが強調して読み上げる。

「何これ…どういうこと?」

呟くと同時にインターホンが鳴った。

鍵を開けた先にいたのは思った通り瀬名だった。

「おい、あのニュースどういうことだよ」

そう言いながらズカズカと紗耶の部屋に入り、食い入るようにテレビを見つめる。

別のニュースに変わった後、瀬名ははあっとため息を吐いた。

よく見たらまだ寝巻姿だ。

「…婚約者とは当分話はできないかもしれないな」

かもしれない、じゃない。できないのだ。

テレビのニュースになるくらいの事態だ。きっとナオは今対応に追われている。