Some say love, it is a razor
(誰かがいう 愛は刃だと)

That leaves your soul to bleed
(それは魂を切り裂いてしまうような)



***


「何聴いてるの?」

「the roseっていう…」

「洋楽?」

「うん、そうだよ」

「私、洋楽とか洋画とか全部わかんない」



なっちゃんは笑いながら席に座って携帯をいじっている。



「なっちゃん、イガさんとの初デートってどんな感じだった?」

「お家デート」

「お家デート?」

「映画とか…映画館だと中々合わなくて。あっち洋画ばっかりでさ」



いいなあ。

私は洋画が好きだけど、啓介が見たがってみたこの前の映画は正直イマイチだったな。



「そういえば、手は繋げたの?」

「えっと…」

「無理だったのね」

「まだ何も言ってないよ!」

「分かるってば」



ヒナは口を尖らせた。



「怖かったんだもん…」

「立花だって男なんだよ。ヒナが苦手な男と一緒」



教室全体を見渡すと話したこともないクラスの男の子達。

背が大きくてガタイのいい怖そうな人達から

眼鏡をかけた小さい子までいる



「啓介は…違う、もん」

「どこが?」

「ずっと一緒にいるし…」

「それは幼なじみでしょ。今はもう彼氏なんだよ?わかってる?」



ーーーーわからないよ


でもこの間の啓介を思い出すとまた怖くなる。

私の知ってる啓介じゃない…



「私…怖い…」

「立花で怖いなら一生だれとも手すら繋げないよ」

「そうだけど……あ…」



ふと、結弦君が頭に浮かぶ。

結弦君のあの優しい声、瞳。

ベンチで隣に座っていても、怖くなかった。


話す時も怯えたことは一度もない。


どうしてだろう…?



「なに?」

「ううん…」



結弦君の話をするのはやめよう

秘密の公園の約束は破りたくない


それに。

啓介には なんとなく知られたくない…