コンペが終わり、会社に戻った時にはすでに日は暮れていた。時刻は十九時を回ろうとしているけれど、営業部のオフィスにはまだ数人社員がいて相変わらず忙しそうにしている。剣持部長は帰社するなりすぐに緊急会議に呼ばれてずっと会議室で缶詰めになっているらしい。

「莉奈、お疲れ様! コンペどうだった?」

ちょうどオフィスで残業中だった亜美が、自分のデスクで少しゆっくりしているところへ声をかけてきた。

「うん、手ごたえはあったと思う」

自分の上司のプレゼン中に途中で退席してしまったと言えば、その理由を根掘り葉掘り聞かれるだろう。前野さんの立場もあるし、ここは黙っておくことにした。

「結果は一週間後くらいだって、楽しみにしてて、がっかりさせないから」

「お、強気な発言だね、それくらいうまくいったってことなんでしょ?」

ほとんど剣持部長のおかげだけどね……。