そして翌日。

朝起きて、仕事に行く服に着替えてからリビングに出ると、剣持部長がまだネクタイをせずに少しシャツの襟元を寛げた姿でモーニングコーヒーをすすっていた。もう片方の手には経済新聞。普通ならそんなスマートな姿に見惚れてしまうところだけれど、いつもは青山のマンションに帰る剣持部長がここにいるということに目が点になってしまった。

「あの、剣持部長……なぜここに?」

「なぜって、俺たちは夫婦だろ? 妙な事を聞くな」

剣持部長が新聞から視線をずらして私をジロッと見た。

昨夜、あれから彼は一度外に出ると言って家を出て行った。どこに出かけたかわからないけれど、私は任された仕事の緊張感がようやくほぐれたところで強烈な眠気に襲われていつの間にか寝てしまった。