3日後、葵の葬儀が行われた。


 そして葬儀が終わると、洸はすぐ名古屋へ向かっていった。見送れない公英の代わりに志音は洸を見送った。


 タクシーを待つ道端で、志音はふと洸を見た。洸はどこか穏やかそうな顔をしていた。

「どうして…?」

 志音はふと言葉が漏れてしまった。泣き腫らした赤い目で、洸をみている。

「…どうしてって?」

 志音の瞳を見つめ返して洸は聞き返した。

「え!あ…いや、その…。どうして悲しい顔していないのかなって。恋人が死んだのに…。って思ったから。」

 洸は少し考えてから言った。

「今は、葵にありがとうって気持ちが強いからかな。葵はもうこの世には存在しないけれど、葵が俺にくれたものは大きくて計り知れなくて…。彼女を支えるために出会ったのに、彼女からもらったものは多かった。だから今は彼女に感謝している。生きていてくれてありがとうって思ってる。」

「どうして、そう思えるんですか?」

「どうして…。葵と出会って、生きる喜びを知った。でも生きる辛さも知った。生きる凄さも知った。みんな生きることを当たり前に感じているかもしれないけど、本当は生きるって、尊い。葵に出会って初めてそれを知った。だから俺はこれからも葵の分までこの尊い命を精一杯使って生きたい。今は、そういう気持ちだよ。」