―葵は、何の迷いもなくその場にしっかり足をつけて立っているように私には見えた。
 あんなに、細くて折れそうな体をしているのに、そう感じるのは何故だろう…。

 新幹線のプラットホームに立っている葵を見て、志音は思った。

 ―それに、葵の病気って何だったんだろう…。


「志音!お弁当買ってきてくれた?じゃあ、乗ろう!」


 志音の思いをよそに、葵はいつものように笑顔だった。


 夏休みで新幹線は混んでいたが、二人は何とか自由席の椅子に座ることができた。

 二人が弁当を食べていると、新幹線は発車した。