志音が病院を退院して2週間が経とうとしていた。

 養護施設での生活は順調に送れていた。
 しかし施設の中で志音は一人でいた。なじもうとはしなかった。


 桜井が志音を尋ねてきたのは2日くらい前だった。
 志音の部屋で、テーブルを挟んで向かいに座った桜井は、相変わらずの笑顔だった。


「元気にしているかしら?」

「順調です。」

 志音は相変わらず桜井に冷たく接していた。

「よかったわ…。」

 桜井は何か考えているようだった。

 少しの沈黙が続いたあと、桜井は志音にとってとんでもないことを口にした。


「ねぇ、志音ちゃん…。……お父さんに、会いに行かない?」