「優愛、草むしり手伝って〜」

大好きな祖母が自分を頼ってくれるのが嬉しくて、優愛は大きな声で返事をした。この家の庭は広い。総面積は車5台分以上あるだろう。そんな広い庭に生える植物の量は尋常じゃなく、骨が折れる。

「今日はここの草を抜くよ」

エリアをブロック分けして何日かに分けて草むしりをするのが祖母のスタイルだった。今日の場所は洗濯物を干すエリアだ。無言で草を抜いていると、祖母がポツリと言葉を零した。

「優里は全然何もしない。病気なんて気の持ち用だよ」

やはり祖母は病気の事を理解していなかった。しかし優愛もまだ子供。保育園に通う年頃だ。自身の母親の病気を理解するにはまだ幼く、よくわからないでいた。

「そうだね…ババの言う通りかもしれないね〜」

だから安易に祖母に同意してしまったのだ。それを聞いた祖母は焦った顔で人差し指を唇に立てた。黙れの合図だ。どうしたのだろうと首を傾げると、祖母はヒソヒソと理由を話した。

「ここは優里がいる部屋の窓の真下だから…。窓開けてあるから聞こえてるかもしれん」

なるほど、そういう事か。それがわかった途端優愛は顔を青くさせた。今のを聞かれたとなると何をされるかわかったもんじゃない。

「一旦家に入ろうか」

その声に従い、優愛は祖母の後ろをついて家の中に入った。その瞬間2階から母親の声がする。

「ババ、後でスーパーで買ってきて欲しいものあるんだけど」

その言葉に呆れながらも、はいはいと返事をし祖母は靴を脱いで自室に入る。自分はどうしようかと突っ立っていると、再び優里の声が聞こえた。

「優愛!」

「はい!」

「てめえ調子乗って色々悪口言ってんじゃねえぞ」

やはり聞こえていたのか。母の怒りに触れ体を震わせながらごめんなさいと返事をする。するとその声はひとまず止んだ。鞄を持った祖母が再び靴を履くと、母から逃げるように優愛は共に買い物に出かけた。