「仙道鈴乃さん。30歳。会社員。趣味は読書。お相手に求める条件は、もの静かで思いやりのある人…で宜しいですか?」

ここは都内にある結婚相談所。
担当スタッフの村瀬さんが、私の書いたアンケート用紙を見ながらパソコンに入力していく。

「は、はい。宜しくお願いしますっ」

思わず声がうわずってしまったのは、目の前に座る村瀬さんがモデル顔負けのイケメンだったから。

ただでさえ、私は人と話すのが苦手なのに。
こんなイケメンと目でもあったら大変だ。

慌てて彼の手元へ視線を移すと、左手に嵌められた結婚指輪が目に入った。

確か26歳って言ってたけど、既婚者だったのか。
ぼんやりと眺めていると、キーボードを打つ村瀬さんの手が止まった。


「仙道さん」

「は、はい」

「お相手の年齢や年収などの条件は入れなくていいんですか?」

「あっ、えっ…と、特にないので……いいです」

そう。
こんな私が我が儘なんて言っちゃいけないんだ。
真面目だけが取り柄の、つまらない女なのだから。

ちゃんとわきまえてますという顔で、私はコクリと頷いた。