次の日、私は言われた時間までに支度をして玄関先で待っていた
「ほんとに来るのかな…」
嘘だったらそれでいいか
一応、言われた通り目を開けている。
メガネはしているが。
久しぶりに目を開けた
やっぱり白い。
色しか判断ができない右目
色も何もわからない左目
それでもどこか肩の力が抜けた気がした
私…目を開けてないことで、結構体力使ってたんだな…
予定より5分遅れた頃
来ないと思った私は車椅子を動かした
が
「ちょ、おい。」
「え…?」
なんと彼が来たのだ
いや、約束はしてたからアレなんだけど…
「ほんとに来たんだ…」
「そりゃね、約束したから。5分遅れちゃったけど」
「ごめんね」なんて言うから許しちゃった…笑
「……」
なんかめっちゃ視線感じるんですけど!?
「え、な、なに…?」
「あ、いや、目開けてるなって」
「う、うん、佐野くんが言ってたから…」
「いいじゃん。」
「へ…」
いい、じゃん…?
「そっちの方が俺は好き。案外綺麗な目だね。」
べた褒めされてる…
終いには…
「可愛いね」
「は!?」
か、かわ、かわいいね…?
さ、佐野くんって実はホスト…!?
そんなこと恥もしないで言えるなんて…
「俺はホストでもなんでもない。それ以上変な妄想すんならこの急な坂道で俺はあんたの車椅子から手を離してもいいけど」
え、今急な坂道…!?
急な坂道ってあそこしかないじゃん!
いつもつんつんしながら歩いてるけど…あそこ一番大変な坂道…!
それだけは勘弁だ!!
「ごめん!それだけは…!」
必死に後ろを向いて謝る
「ふっ 俺がそんなことするわけないでしょ」
「騙されやすぎ」
「な…」
なによもう!
「てか、前園さん、見えてる…?」
「は…?」
何を言い出すんだ佐野大貴くんは
「今俺の目を見てちゃんと話してくれたから」
あ、そゆこと
「右目は色だけ判断できるの、左目は全く見えないけど」
「あ、じゃあ肌色に黒い点が…みたいな?」
「そーそー」
「そっか、色は判断できるんだ」
てか、さ?今思った…佐野くんって案外結構喋るね…笑