ケータイ小説 野いちご

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初恋のうたを、キミにあげる。

閉じこもった世界で





心がずっと狭い箱の中に入れられて、窒息してしまいそうだった。


変わりたいのに変われない。


もどかしい苦しさを抱えながら、私は今日も青空から逃げるように俯いた。








***



誰もいない部屋の中、開かれたノートパソコンとそばに置かれたマイク。


ヘッドフォン越しに聞こえてくるメロディーに神経を集中させる。

画面越しの相手に向かって歌うときは、違う自分になれている気がした。



私を見てくる目も、こそこそと笑う声もない。

この空間にいるときだけは、自由だった。


————あ、今のところ上手く歌えた。


メロディーと空気に溶けていく自分の歌声だけは嫌いじゃない。

歌い終わるとパソコン画面にたくさんのメッセージが流れてくる。

私の歌声を好きだと言ってくれる人たちがくれる感想や応援メッセージに自然と頬が緩んだ。



「ありがとうございました! そろそろ放送が終わりの時間ですが、今日はこの枠で終わりにします。また来週放送しますので、お時間のあるかたは聴きにきていただけると嬉しいです」


普段は上手く話せない私も、ここでは言葉に詰まることなく呼吸をするように思いを伝えられる。


聴いている相手には私の顔も本名もわからない。

だから、緊張せずにいられるのかもしれない。








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