あの、壺の事件?からだいぶ経ったある日。




『ニャーーー』


真っ黒な猫が、あの隙間に入っていくのが見えた。





そういえば。


結局、
あの隙間の先はどこに繋がっているのか。
わからないままだった。





私は、周りをキョロキョロと見回した。


誰もいない。





お母さん達と約束してから、

ずっと入らなかった隙間。


私はすぅーと息を整え、隙間に入っていった。





壺が埋まっていたところは、土が窪んだままだった。

相変わらず苔が生え、ジメジメしていた。




どこに繋がっているか、調べるだけ!
わかったら、もう入らないから!!


心の中で言い訳をしながら、
隙間の真ん中あたりまできた。


ここから先は、まだ進んだことがなかった。


私はズンズン、先に進んだ。








「あ・・・あれ?」


ムギュッ



私の頬っぺたが、冷たいコンクリートに挟まれた。


隙間は奥に行くにつれて段々と細くなっており、
最後は顔も通らない程だった。



少し見える景色から察するに、
隣のマンションの駐車場あたりだろう。


しかし、通り抜けることは不可能だ。




「なーーんだ!期待はずれ!!」


こんな隙間、通れるのは猫ぐらいだろう。





あれ?




じゃあ、


最初に見た、


あの麦わら帽子のおじさんは?








そう思った瞬間、


・・・・ゾクッ



背後に気配を感じた。







私は怖くて、動けなかった。




『ニャーーー!』


さっきの黒猫が、隙間のムコウから戻ってきた。


まるで、

邪魔だからどいてよ!と言うかのように。



フッ……


気配がなくなった。


猫は足元をするりと抜けて入り口の方へ向かった。

私は慌てて猫を追いかけた。




壺のあった窪みに足を取られ、つまずきそうになりながら、一生懸命追いかけた。



抜けた!!!



私はグッと伸びをして、大きく息をした。












それ以後、
あの隙間は入ることはなかった。