次の日、僕は中庭に向かう。
彼女を描くことができる高揚感と、本当に自分が描いていいのかという不安。
そんなことを思いながらスケッチブックを片手に廊下を歩くと綺麗な音色が聴こえてきた。
その音色は透明で、無邪気な、本当に音楽を愛しているのが伝わる音色だった。
「...すごい」
僕は彼女のフルートを吹く姿がとても"美しい"と思った。
...こんなに美しい彼女の瞳は美しい。
でも....
「あっ!颯くん!」
フルートの演奏を辞めた彼女がかけてくる。
「演奏、すごく綺麗な音だった....羽山さんはすごい」
そう言うと彼女はえへへっと笑っていた。
「そうかなぁ?嬉しい、ありがとう」
笑顔の彼女の中にどこかいつも影を感じる。