僕は田原颯(タハラソウ)
この海が丘高校に通う2年生だ。


特別静かな理由でも賑やかな訳でもない。ごくごく普通の男子高校生。


僕は部活は男子にしては珍しい美術部に属している。運動は別に嫌いじゃないけど絵を描くのはすごく好きだ。

だから毎日絵を描いている。


夕日に染まる海も、
風に揺られる木々も、
生徒が去った静けさのあるグラウンドも。


すべてが僕の五感を揺らす。


そしてこの日、僕は中庭でキャンバスに描いていた。それはただただひたすらに筆を走らせる。


そしていよいよ色をつけようと思って筆に手を伸ばした時、君は僕の元に落ちてきた。


_ドサッ


「いったぁ~!」


突然女の子が降ってきた。
それはまるでスローモーションみたいに。


「...あの、大丈夫?」


そっと声をかける。
すると女の子は顔を青くして慌てた様子でこちらをみていた。


「ひぇっ...あっっごごごめんなさい!!」


「いや、僕は大丈夫だけど君は怪我してない?」


「あっ大丈夫です..!受け止めてくれてありがとうございました!」


顔を真っ赤に染めてお礼をいう彼女を僕はあの真っ白なキャンパスに描きたいとその時思った。