パチン。


眩しさに目がくらむ中、またあの音がしました。
やがて光に慣れてくると、ネモは「わあ」と小さな声を漏らしました。


ネモは太陽の光を跳ね返す湖のほとりに立っているのです。
緑の葉が揺れる木々が影を落とし、遠くに見えるのは黄金色に輝く砂の海。


目の前に広がっていたのは、砂漠のオアシスだったのでした。


そして、そこにいたのは大きなフウセンウナギとウワバミ。
それぞれの頭には小さな王冠が輝いています。
豪華な日傘の下、彼らは向かい合って囲碁を打っています。


碁盤を睨みながら、フウセンウナギが言いました。


「オアシスの王よ、変な生き物が迷いこんだようだぞ」


ウワバミが「ふふん」と鼻を鳴らしてネモを横目で見ました。


「深海の王よ、猫のようだな」


「ほう、これが猫という生き物か。珍しいものだ」


ネモにはフウセンウナギとウワバミのほうがずっと珍しいのですが、お互い様のようでした。
フウセンウナギが尻尾の先で黒い碁石を打ちます。


パチン。


さきほどから聞こえていた音は、これだったのです。