圭太の提案で、私は【睡蓮】の姫(仮)になったわけだけど...。
一つだけ、問題がある。
それは、住むところがないということ。
...いや、正確に言えば家はあるよ。
ただ帰れないだけ。
どうしようかな。
仮とはいえ【睡蓮】の一員なわけだから、勝手に【桜蘭】から金を巻き上げるのはダメだろうし。
今は諭吉があるから、それでしのぐか...。
お金が底をつく前に対策を練らなきゃ。
「話がまとまったところで、今日は解散にする。お前も帰っていいぞ、咲誇」
「分かった...って、何で名前呼び?」
「仲間だからに決まってんだろ。
お前も俺らのこと名前で呼んでんだし」
それは髪色で呼ぶのが面倒だからだよ。
親しみ込めてるわけじゃないんですけど。
どうでもいいけど、やっとここから出られる。
さーて、ホテル探しに行くかな...。
「あ、ちょっと待った」
また引き留めんの?
何回やれば気が済むんだろう、この総長。
「明日、ちゃんと来いよ?」
「はっ...?」
「だから、逃げんなよってこと。
もし昼までに顔出さなかったら家まで迎えに行くからな」
「いや...あんた私の家知らないでしょ」
「そういえばそうだな。住所教えろ」
「絶対に嫌」
「なら携帯の番号」
「お断り」
なんで知り合って30分にも満たない男に個人情報晒さないといけないわけ?
悪用うんぬんを言ってるわけじゃないけど、住所も番号も、教えたら面倒なことになりそうな情報ばかりだ。
ホイホイ教えられるものじゃない。