傘に雫が当たってポツポツと音を立てる。
弱い雨が降ってる中僕は、彼女と向き合っている。
場所は彼女と子供の頃よく遊んでいた馴染みある公園だ。
今日こそ、彼女に、ずっと言えなかった事を伝える。
「どうしたの…?」
向き合ったまま何も言わない僕に雨音にかき消されそうな声で聞いた。
彼女は僕から何かを察したようで泣きそうだ。
その声で、彼女に名前を呼ばれるたびに胸が熱くなったり、その顔で笑った顔や、悲しそうな顔、怒った顔も、僕に向けてくれた言葉が全部、全部…
「大好きだったよ。」
僕は泣きそうになるのをこらえてやっと言えた。
「今までありがとう。」
君は泣いていたと思う。
雨が強くなって君の顔が少しぼやけて見えなかった。
「こちらこそ。」
声が震えていた。

僕達はずっとすれ違っていた気持ちを全部雨の中で捨てた。
僕達はここまでなんだ。

これから僕は君がいない新しい道を歩むんだ、と水たまりをまたいだ。