コンコン、カーン……。



ピンポン球の高い音。それは広い体育館のあちこちから聞こえてきた。
小さな台に向き合う大勢の部員達。
汗と熱気が充満して蒸し暑い空間。


ここが、今日から私の部活動の場となる。


「ーーー平井先生、今日からお世話になります。河原です。よろしくお願いします」



”転部届”



そう書かれた紙を手に、私は背もたれつきの折り畳み椅子に座る男性教師に深々と頭を下げていた。


ーーー平井 智(ヒライ サトシ)。

大柄な体格にもさっとした白髪混じりの髪。度の強そうな分厚い眼鏡。歳は見た感じ50歳前後だと思う。


「怖い」「笑わなさそう」


そんな言葉がぴったりの先生。


そして、この平井先生こそが私が転部届を提出した、青柳中学校の卓球部の顧問の先生だ。


「えー……河原 美由紀、と。確かに転部届は受け取った。今日からは卓球部の一員として、熱心に練習に励んでくれ」


「はいっ…!よろしくお願いします!」



今日は7月19日ーーー1学期の終業式の前日。
中学1年生の私にとって、中学校生活で初めて迎える夏休みも目前に迫ったこの日。

私は正式に青柳中学校卓球部の一員となった。

同学年の卓球部員の人達と比べると、3ヶ月以上遅れての入部ということになる。



同学年の人達と上手くやっていけるかなぁ。
皆に追いつくくらい上手くなるかなぁ。
先輩、怖くないかなぁ……



色んな不安が頭の中でグルグル回る。

それでも私は、これから始まる部活生活に胸を高鳴らせていた。