場違いなその男がやって来たのは、俺が中学2年の頃だった。

田舎の小さな児童養護施設。

住んでいるのは、親の養育を受けることが出来ない子供たち。
それに、丸メガネの似合う園長と、いつもニコニコと優しい、園長の奥さん。

まるで本当の家族のように、仲良く慎ましく過ごしていた。

始まったばかりの夏休み。
下の子の面倒をみたり、施設の手伝いをしたりで割と毎日忙しく過ごしていた。

畑を耕す手を止め、空を見上げて汗を拭う。
手伝いも嫌いじゃないけど、そろそろ宿題も始めないとな、なんて思っていたときだった。

「お前か、森下とやらは」

「はい?」

振り向くと、そこには困り顔の園長と、恰幅の良い男が立っていた。