黒塗りの車の前で待っていてくれた男性は、屋敷の専属運転手で、名前は中堂さん。
優しそうなおじさんだ。

発進した車内で、中堂さんが運転しながら色々教えてくれた。
ざっくりだけど、屋敷のルールだとか、俺がこれからすることとか。

「旦那様も、お嬢様のためとはいえ、同級生を執事に、だなんて。
しかも練習期間だなんて。

驚いたでしょう、森下君」

「ええ。驚きました。
まさかこんな形で施設を出ることになるとは。
しかも来訪翌日とか」

素直な気持ちを口にしたところで、中堂さんが気を悪くした様子はない。