「え、私の願い、ですか?」


目が点になる。

バスケ部の試合の翌日のお昼、空き教室で椎先輩とご飯を食べていると椎先輩は突拍子もないことを言い出したんだ。


「そう。麗ちゃんには俺のせいで危険な目に遭わせたから、せめてものお詫びをしたくて」


申し訳なさそうな顔をする椎先輩に、私は「気にしないでいいのに」と笑った。

あの時椎先輩ががつんと言ってくれたからか、今日登校してからあの女子達に絡まれることはなかった。

美紅ちゃんも椎先輩のことで私を虐めたりしなかった。まあ、全く虐めをしなかったわけではないけど。

大体あれは自分のせいでもあるし椎先輩が気に病むことでもないのだけど、椎先輩は決して首を縦に振ろうとはしない。


「ごめんね、俺がしたいんだよ。俺にできることなんて少ないけど、それでも麗ちゃんの望みがあれば叶えてあげたいんだ」


麗ちゃんがよければの話だけどね、と椎先輩は付け加える。

椎先輩はよく私に「頑固だ」、「一度言ったら聞かない」だとか言うけど、先輩だってそうだと思う。


「私の願い、か…」


考えてみても、これといって浮かばない。


「あ、でも」


ひとつだけ、あるかもしれない。

発した言葉に先輩は反応して「なに?」と問う。





「ショッピングセンターに、行ってみたいです…!」