「…私に何か用ですか」


連れてこられたのは体育館から少し離れた部室棟の奥にある、入り組んだ場所。

見通しが悪く人通りも少ない、袋小路のような場所だ。


私を閉じ込めるように出口を塞ぐ女子達は私を見下しながら「あんた、誰?」と言う。


「あんた、今朝あの椎くんと一緒にいたやつでしょ?うちの学校の制服着てるし、うちの生徒だよね?何年何組?」

「大体、椎くんと一緒にいるなんてさあ、何様のつもりだろうね。なに、あんた椎くんの何なの?カノジョなの?」


いたぶるような視線が痛い。

語尾は決して荒くないのに、トゲのある言葉が胸に突き刺さる。

私が清水麗だとバレなければ、新たな勢力からの虐めはないと思ってたのに。それなのに、結局こんな目に遭うなんて。

やっぱり私は、名前がバレてもバレなくても目につきやすい存在らしい。


ほんと、嫌になる。




「何さっきから黙ってんだよ、質問してるだろうが。さっさと答えろっつってんだろ!」


怒鳴りつけるような大声に、肩がびくりと上下した。

答えようにも答えられない。

口を動かしても、息を送り出しても、痛めつけるようなその視線で見つめられるだけで、私の声帯は簡単に震えなくなる。



「ふざけてんじゃねえよ、この阿呆が!」



バシン、と目から星が飛び出すような痛みが頬に走る。